EB42回会議について
吕学都
科学技術部
2008年9月21日-26日、EB42回会議がドイツで行われた。9月21日―23日は非公式会議、9月24-26日は公式会議で、合わせて6日間、通常の会議より1日多く開催された。それは審査するプロジェクトがあまりにも多く、プロジェクト審査は延期できないためである。今回の会議の重点項目は、前回の会議以来EBメンバーが提出した審査すべきプロジェクト、前回会議でレビューされたプロジェクト、VVM、DOE委任及び委任プロセス修正、方法論委員会に関すること、小規模プロジェクトワーキンググループ及び造林ワーキンググループが推薦した批准事項などがあり、討論された内容が非常に多かった。
以下が会議の主な内容及び重要なポイントのまとめである。
1. 方法論に関して
今回の会議では、三つの新しい方法論が承認された。
AM0070 - "Manufacturing of energy efficient domestic refrigerators"
AM0071 - "Manufacturing and servicing of domestic refrigeration appliances using a low GWP refrigerant"
AM0072 - "Fossil Fuel Displacement by Geothermal Resources for Space Heating"
AM0070とAM0071は前回のEB会議で承認できず、方法論パネルが改めて修正した方法論で、AM0072は中国の石家庄地熱による熱供給の方法論である。会議ではその他、AM0009、AM0058、AM0064、ACM0008、及びACM0010の一連の方法論の修正が承認された。
2. DOE委任に関して
私の要求に応じて、今回の会議では、DOEのボトルネック問題と解決方法について重点的に討論され、相応した決定が出された。すでに存在するDOEを新たに認定する際、証明審査は行われなくてもよい。新しいDOEの申請に対して、書類審査に合格した後、サイト審査を受け、有効化審査能力を検証する。もし、有効化審査をするプロジェクトがなければ、CDM認定パネルは審査するためのプロジェクトをそのDOEに提供する。EBはできるだけ新しいDOE委員基準とプロセスを公表し、EB44回会議でこの問題を解決する予定である。
今回の会議のこの決定事項は、現存のDOE委任プロセスを大きく簡略化・促進できる。一旦この政策が正式に施行されると、条件を備えた機構がDOE資格を申請すると、現在、DOE資格を取得するのに2年間以上かかるものが、半年以内に許可が出るようになる。しかし、同時にDOEのルール違反に対する処罰も増えた。もし、DOEがEBの決定した職責に沿って業務ができなかった場合、警告、資格一時停止、経済的罰則などを負わなければならない。これからのEB会議では、DOE委任の新基準及び処罰などについて詳しく討論していくことになる。DOE委任の改革の論点は二つあり、ひとつは許可する基準を緩めて、もうひとつは逆にルール違反の行為にはその処罰を厳しくしていく。この決定は、DOEのボトルネックを解決していく際、根本的に改善するのに重大な意味を持つだろう。
EB会議は、一部のDOEが稼動一年以上のプロジェクトを受け付けない方針について厳しく批判した。それらのDOEに対してすぐにでもこの誤った方針を改正するように要求した。それでも改善しないDOEは、次回のEB会議でDOE資格を一時停止にする処罰を受けることになる。EBはこれらのDOEに正式に通告をする。また、多くのDOE審査員さらに技術総監督は、しばしばレベルが低く論点のずれた質問をする。もしこの状況が続くと、プロジェクト事業者の公訴やエビデンスの提出により、DOEは資格を一時停止される可能性がある。なぜならこのようなDOEは現地における業務の知識や業界の知識を持っていないためである。これらの知識はDOEとして認定されるための重要な基準と条件である。ここでは、私は中国でCDM業務を行うDOEに、ぜひ関連業界の知識や現地での知識のレベルをアップして欲しいし、でないと事業者がEBに「このDOEは業務に関する知識と能力を持っていない」と公訴され、その証拠も充分であれば、資格が一時停止される可能性が非常に高くなるので、ここで警告をしておきたい。
中国国内では実力のある機構が、すぐにでもDOE申請をする可能性について研究し、申請することを私は強く勧めたい。中国国内ではいまでもDOEが大変不足しているからだ。
3. 小規模方法論問題
この度三つの新しい方法論AMS III.U Cable Cars for Mass Rapid Transit System”、 “AMS III.V Decrease of coke consumption in Blast Furnace by installing dust/sludge recycling system in steel works”及び“AMS III.W Methane capture and destruction in non-hydrocarbon mining activities”が承認された。ほかには、四つの方法論、AMS I. A、AMS III. H、AMS III. I及びAMS III. Qの改正が承認された。
4. VVM
最初の計画では、今回の会議でVVMについて討論を経て実施しようとしていたが、一日討論しても結果が出せなかった。EBは次回の会議でVVMについて討論し、結論を出したいということで合意した。
5. 我が国のプロジェクトにおける審査の結果
(一)Request for reviewされたプロジェクトに対する審査:
今回、我が国の34のプロジェクトが、登録申請した際にRequest for reviewされて、その数は前回より12多かった。審査後、17ものプロジェクトが条件付き登録になり、この 17のプロジェクトにおける報告書の再提出が求められた。この17の事業者及びDOEは要求された通りに報告書を提出しなければならないのである。時間的制約はないので、Under Reviewされないように、事業者と、DOEは十分な時間を使って慎重に修正することが望まれる。Under Reviewを行う必要があるプロジェクトが17あったのは非常に残念なことである。(主要なレビュー問題に関しては、下記(五)(六)(七)にて記すこととする。)例えば方法論ACM0004を応用し、ベースラインを選ぶ際に、プロジェクト周期内、固定の電力価格しか考慮しなかった。固定電気価格を適用するのは合理的か否かを分析することはUnder Reviewにおいて要求される。もし将来の電力価格が予測できない場合、その理由を説明しなければならない。この問題は容易に解決できるはずである。私は、前回のEB会議レポートでこの状況を紹介した。
(二)ベンチマーク値の適用:
化学工業、セメント産業等のIRRベンチマ-ク値は、廃熱・廃棄ガス発電の標準ベンチマ-ク値とする。現在までは、EBが特別の明確な政策を規定してこなかったが、今回次の2つのポイントが明確にされた:①自家用の発電所の場合、EBはその業界のベンチマ-ク収益率を取り入れることに同意する。②専用発電所によって発電してグリッドに売電するような場合、電力産業のベンチマ-ク収益率を適用する。ある企業は自家用の発電所を明確にせずに、先ず発電量はグリッドに入れて、同時にその企業も生産用の電力を購入した場合、グリッドに入れた電力と購入した電力の差を計算できる。もし購入した電気量がグリッドに入れた電気量の75%以上を占める場合、自家用の発電所と見なし、その業界のベンチマ-ク収益率を取り入れることができる。一方、もし購入した電気量がグリッドに入れた電気量の25%にも至らない場合、その企業は発電所と見なし、電力産業のベンチマ-ク収益率を適用するべきとなる。しかし、購入した電気量はグリッドに入れた電気量の25%~75%を占める場合、現在にはどのような基準を取り入れるかがまだ明確にされていない。
(三)会社の内部収益率について:
その内部収益率も非常に高い場合、投資分析ガイドラインに基づき、その会社は“同様のリスクと似たプロジェクト”の実績があったということを証明すべきである。現在では、この“同様のリスクと似たプロジェクト”を法律面から分析すると、その解釈が違った。しかし、廃熱発電プロジェクトを運営する場合、同様のベンチマ-ク収益率を採用しても大きな問題はないであろう。
(四)売電するプロジェクトの投資分析について:
発電してグリッドに売電するプロジェクト(ACM0002方法論のアプリケーション)にて投資分析する際、プロジェクトライフサイクルの中に、同一の規定電力価格を適用する。EBは、なぜ電力価格変動の代りに固定電力価格を採用するのかについて考えを示すことを要求した。その主な原因として、もしグリッド電力価格が上ったら、プロジェクト内部収益率はベンチマ-ク収益率を超える可能性があるためである。それゆえそのプロジェクトの追加性がないと判断される。
※ なぜ固定電力価格を適用したのであろうかということについて、数人のトップクラスの専門家との検討を通じ、下記いくつかのポイントが参考となる(これはあくまでも参考程度のもので、判断は各事業者に委ねる)
1. 中国国内でプロジェクトF/S分析を行う際、関連の規定に基づき、計算の正確性、及び評価結果へ影響を与えないよう、資金投入、製品生産との同年の統一価格、一切の価格には現行価格を採用する。(中華人民共和国水利省の公布した水力発電「1995」186書類「小型水力発電プロジェクトにおける経済評価の規定」(SL16-95)修正版(中華人民共和国水利省「2002」国科綜便字第07号「現行有効水利工事技術標準の公布」- 該標準はまだ有効)電力工事技術改造プロジェクトにおける経済評価の暫定方法等)その固定価格は、関連の規定に基づき、IRRの計算を行う。現在には中国のF/S報告書を固定価格にて作成するのが慣例である。
2. 中国における電力価格の政策は中央政府が厳格に管理しており、国家の調整によらないことは、電力価格の変動が大きくならないことを意味する。国家が物価安定を確保するため、電力価格等のベース価格を厳格に管理している。発電企業としては、電力価格の上昇を予想して投資決定を決めることはあり得ない。電力価格の調整は、いくつかの政府部門が関与する必要があり、さらに中央政府より許可を得る必要がある。これは発電企業が予測して、コントロールできるものではない。したがって、プロジェクトは事前にこの価格の上昇を考えられないし、投資分析の時も考慮できない。もしF/S分析の時、電力価格の変動を考えれば、燃料や、人件費等の変動も自然に検討する必要がある。これは、実際に運営するには不現実なものである。
3. 電気売買契約を分析すると、一定の期間内にも固定電力価格を取り入れている。あるプロジェクトは、既に発電をしている場合、既に電気売買契約があり、その契約にある電力価格は、固定電力価格の証拠と見なされる。実際、多くの発電所におけるグリッド電力価格はある電気売買限度額内に定めている。しかし、その限度額以外、低下変動の電力価格も採用される。もしプロジェクトが固定の電力価格を採用する場合、これはもっと保守的なやり方と言える。
4. 電力価格記録による曲線で電力価格の変動趨勢を判断してIRRを計算する場合、同時に運営コスト等が上昇することも考慮しなければいけない。その運営コストが上昇するのは、電力価格の上昇よりも極めて高かったものである。国内のある地方省においては、ここ数年内、再生可能エネルギーからグリッドへの売電価格が下がる趨勢であった。主な原因は過去に再生可能エネルギーからグリッドへの売電価格を高く得られたものの、現在、入札制度を採用しているから、逆に低下趨勢になっている。従って、ここ数年における、グリッドへの売電価格の変動、物価上昇(特に人件費、設備、メンテナンス、部品代金等の上昇)を考慮できるのであろう。その関連機関がこの問題を回答する時に、信頼できる、前後一致する、十分な証拠の提出と説明を行う必要があろう。
(五)プロジェクトでRequest for review された問題点:
プロジェクトでRequest for review された問題点は、廃熱、廃圧、廃棄ガス等における価格の合理性にある。またその他、DOE、EBはガイドラインに準じ、そのF/S報告書を審査したかどうか、特にDOEは、現地の知識や業界知識をもって、プロジェクト中に取り入れられているデータが合理であるかどうかを比較して分析したかどうかが問われた。(別のCDMプロジェクトのデータを引用して比較するだけではだめである)さらに、バリア分析を使った場合でも十分な説得力を持たなかったケースもある(例えば銀行の手紙があっても具体的な内容無等)。
(六)Under Reviewされたプロジェクトの状況:
前回の会議では我が国の18のプロジェクトがUnder Reviewに入った。そのうち15は条件付き登録になったが、非常に不幸なことに、3つのプロジェクトが登録できなかった。これはわが国において初めてのことである。
この3つのプロジェクトは、山西にあるCDQ廃熱発電プロジェクトで、主な問題はベースラインのアプリケーション問題であり、このプロジェクトはもし再申請する場合、登録になるチャンスはまだあると思われる。二つ目のプロジェクトは河北唐山の発電所の廃熱発電のものであり、鋼鉄産業のベンチマ-ク収益率を追加性の論証基準としたので批准されなかった。三つ目のプロジェクトは、池州のあるセメント廃熱発電プロジェクトであり、主な問題は、企業内部の収益率を追加性の論証基準としたが、嘗て“同様のリスクと似たプロジェクト”も提出されなかった。
※特別に注意しなければならない点:
条件付き登録できるプロジェクトは、もし回答が要求に合わない、要求された証拠を提出できない場合、最終的に登録できない可能性が高い。条件付きの登録は、回答を行うのに12週間もあるので、十分な時間をもってこの問題を十分に検討してから正確に回答し、すべての提供できる証拠を提出すれば、最終的には登録できるであろう。プロジェクト事業者とDOEは、この唯一の機会を十分に重要視して、活かすことが望まれる。
(七)Request for review されたCER発行:
我が国の2つのプロジェクトは、CER発行の申請を行う際にRequest for Reviewされた。そのうち1つは一部分のCER発行が批准されたが、そのほかの部分は批准されなかった。主な原因は計算が間違っていたことである。もう1つのプロジェクトは、実際に執行されたモニターリングと既に批准されたモニターリング一致しなかったので、Deviationを申請してから発行を申請するしかないと思われる。
※特別に注意しなければならない点:
あるプロジェクトは、批准されたモニターリング計画の要点に沿って行われない。例えば発電量の場合、ある企業が勝手にモニターリング周波率(毎時間が毎日に変更された)を要求に沿わずに修正した(1回/年を1回/6年に変更した)、などである。EBはこれらの行為に対して、CER量を減少する、さらにCER発行を拒否することもあるだろう。
そのほかもう一つの注意すべき点は、あるプロジェクトが元の計画にそって執行されなかった。例えば、設備台数の増加(よく見られるケース)、このケースもプロジェクトが再び拒否される可能性をもたらす。従って既に登録できたプロジェクトは、確認された建設計画、モニターリング計画に沿って行わることを特に重要ししなければならない。でなければ、CER発行できないかもしれない危険性がある。


