政府の「地球温暖化問題に関する懇談会」が十六日、提言をまとめた。そこでは焦点となっている温室効果ガスの排出量取引制度導入に向けた首相の積極姿勢が際立つが、本格的導入には高いハードルが待ち受けている。 福田康夫首相が先週公表した福田ビジョンは、排出量取引について「今秋から試行的実施を開始」と明記した。「ポスト京都議定書」の枠組みが始まる二〇一三年からの本格導入を視野に準備を始める、という意味だ。
これに対し、政府懇談会の提言は、試行的実施の必要性には触れたものの、開始時期は明示していない。慎重意見が根強くある産業界への配慮が背景にあるとみられる。
一方、自民党地球温暖化対策推進本部の中間報告は「一〇年から準備的運用を開始」。今秋からの試行だけでは準備不十分として、「もう一段階、ルール作りに向けた大規模演習を行うイメージ」(党関係者)という。
これらのビジョンや提言、中間報告を比較すると、排出量取引導入が「首相の意欲を反映したトップダウン」(政府筋)で、福田ビジョンに盛り込まれたことがよく分かる。
ただ、ビジョンの「試行的実施」の定義はあいまいだ。
国内では環境省が自主参加型取引制度を実施しているほか、経済産業省は今秋に中小企業対象の取引制度を導入する予定。試行的実施とはこれらの統合を想定しているとみられるが、ルールは未整備で、両省から「急なことでイメージがわかない」との戸惑いも漏れている。さらに、政府懇談会座長の奥田碩内閣特別顧問は、排出量取引導入を「首相決断として産業界も重く受け止める」としているが、産業界にはなお慎重論が根強く残る。導入されれば、企業には削減負担が重くのしかかるからだ。
例えば新興国と激しい国際競争を展開する鉄鋼業界の場合、導入に伴う負担増は企業存続にかかわる大問題で、簡単に首を縦に振るわけにはいかない。


