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 京都議定書に続く2013年以降の温室効果ガス排出削減の枠組み作りは、今年12月の交渉期限を控えて国際交渉が大詰めを迎える。先進国が20~30年までにどれだけ減らすかを示す中期目標を相次いで明らかにする中、日本も昨秋、「中期目標検討委員会」(座長・福井俊彦前日銀総裁)を設置して検討を本格化。しかし、高い目標が必要とする「環境派」と、経済活動への影響を心配する「経済派」との意見の隔たりが大きく、着地点は見えていない。

 ◆対立の構図

 先月18日、内閣府地下講堂で開かれた第2回検討委員会。経済産業省所管の財団法人「地球環境産業技術研究機構」の茅陽一副理事長は「なぜ国連の作業部会が『25~40%のシナリオ』を取りあげているのか理解できない」と不満を述べた。

 「25~40%」というのは、世界中の科学者でつくる「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が07年、温暖化の影響を低減するための最も厳しいシナリオの一つとして示した「20年までに先進国で1990年比で25~40%削減」の事を指す。茅氏は「IPCCでも詳しく検討されたわけでなく、かなり特殊な条件設定で求められたもの」とも指摘し、25~40%を軸に日本の中期目標を決めることに疑問を呈した。

 これに対し、環境省所管の財団法人「地球環境戦略研究機関」の浜中裕徳理事長は「今後の交渉で考慮される可能性が十分ある25~40%を選択肢の検討で考慮すべきだ」と力説した。

 最終的に数値目標を決めるのは政府で、委員会の役割は中期目標の選択肢を示すにとどまるため、望ましい数値をずばり指摘する場面はない。しかし、2人の主張の違いは、「25~40%という大幅削減は、上院の同意を得るのが難しい米国の次期枠組みへの参加を困難にしかねない」とする経産省と、「25~40%は科学的知見が求める削減幅」とする環境省との対立の構図と重なる。背景には、エネルギーの安定供給を通じて経済成長を持続させたい経産省と、二酸化炭素(CO2)排出量の多い化石燃料への課税強化などを通じて温暖化対策を進めたい環境省という、両省の立場の違いがある。

 結局、この日の議論で各委員が挙げた選択肢は0%から40%まで大きくばらついた。

 昨年11月の第1回委員会では、委員から「環境派はより現実的に、エネルギー派(=経済派)はより理想的な形で議論をするという認識の共有化も重要」と、両派の違いを乗り越える必要性を指摘する意見も出ていたが、現時点で折り合えるめどは立っていない。委員会は今後4~5回開催し、削減のための投資費用や経済への影響などについても検討する。

 政府が中期目標を設定する時期は未定だが、3月末からドイツ・ボンで開かれる国連の特別作業部会では、先進国全体でどのくらい削減すべきかが議論される。斉藤環境相は「日本がリーダーシップを発揮するための中期目標を作る必要がある」として、「3月末までに何らかの方向性は出す」との考えを示している。

 ◆京都の反省

 今回、中期目標の検討にあたって政府は、委員会の議論や議事録を公開し、国民のアンケートも実施するとした。京都議定書を採択した97年の京都会議に向けた中期目標の策定では、当時の通産省と環境庁など関係省庁が対立し、政府部内で折衝を繰り返したが、「密室協議」との批判を浴びた。政府関係者は「産業界を中心に『京都議定書は、日本だけが厳しい目標をのまされた不平等条約』との批判が依然根強い。今回は出来る限りオープンな形で進める」としている。

 しかし、委員会では、目標とする数値達成のためにどんな政策が必要かについてはほとんど議論しておらず、これについて「具体的な打つべき政策と経済効果を示さなければ、中期目標は絵に描いたモチになりかねない」(西岡秀三・国立環境研究所特別客員研究員)との指摘も出た。京都議定書の国際交渉で、日本は6%の削減義務が決まった後、慌てて目標達成のための政策を立てたが、その結果、「関係省庁の予算獲得が目的としか思えない効果の疑わしい政策も目立った」(西岡氏)というのだ。

 環境技術に詳しい安井至・国連大学名誉副学長は「数値目標を示す以前に、日本の環境技術を無償提供し、その見返りに排出枠を得られる仕組みの提案など、日本が国益を保つための具体的な交渉カードの準備が重要ではないか。政策なく丸腰で交渉に臨めば、不利な条件の数値を受け入れざるを得なくなる恐れがある」と指摘している。